Wednesday, 26 December 2018

cast away

角幡唯介「漂流」
https://www.amazon.co.jp/%E6%BC%82%E6%B5%81-%E8%A7%92%E5%B9%A1-%E5%94%AF%E4%BB%8B/dp/4103502312/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1545702901&sr=8-1&keywords=%E8%A7%92%E5%B9%A1%E5%94%AF%E4%BB%8B+%E6%BC%82%E6%B5%81

角幡ノンフィクションの中でも抜群に面白かった。




著者の探検譚は基本、周囲や過去の人たちの行動と思想をインタビューや文献を交えて紹介し、自身の思想と行動に絡め、投影しつつ綴っていくスタイル、と理解しているが、この「漂流」は南方漁業という、著者にとっては完全アウェーな舞台がターゲット。

ダイナマイト沈船漁りを始めとして、基本インタビュー(と文献)で仕入れた話なのに、臨場感あふれる筆力が素晴らしい。「インタビューシーン」と「過去のシーン」と「自分の思い」の間を切れ目無く自然に行き来する文章構成力、技術力はどうしたら身につけられるのだろうか。

主な取材対象の佐良浜の自由奔放浪費癖マックスな漁師と久松の堅実な漁師との関係について記しているところで(p174)、その違いが生じる原因を探ればもう立派な研究だよな~と。

後段で漂流中に他の船員が船長を襲ったことに関する証言のくだりなど(p375)、最近のポリコレに対する世の嫌悪感を地でいくような内容。著者にそのつもりはないかもしれないけど。

終章で、土地に縛られず、世界との根源的な関係を感じられなかったことが、著者を探検に向かわせた、と書かれているが(p421)、現代日本のほとんどの人は生の形式を感じないままに、感じようと能動的に行動することなく日々の生活を送っているわけで、「それ」を求めて山や探検などの行動を起こしているのは絶滅危惧種的少数の人種。なので、著者の佐良浜漁師への「羨望」が読み手に伝わるのかが気になる。一方で、土地とか生き方に縛り付けられた「選択肢のない人生」ってつくづく恐ろしいと思う。

角幡さんが書いてくれなければ、一生知らないままでいたかもしれない南方漁業の一端を知ることができたことに感謝。

極夜行とかがおもろいと思ったら、これも絶対面白いので読むべき。

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