Thursday, 19 June 2025

スイスドリルトレーニング その3

ウィーンから戻った翌日、北大チームの二人(mato, yoshi)が合流。

当初、後半の期間を二週間もとっていて、「長すぎでは?」と思っていたのだけど、ウィーンで暑いくらいの好天が一週間続いたのち、チューリッヒでは寒々とした雨がちのの天気に。。

EvanとTheoは天気予報とにらめっこしつつ、ゴーサインを出すタイミングに悩んでいたけど、ついていくだけのわしらはお気楽なもので、いかないのであれば内職を、、とチューリッヒ大のEvanのオフィスやAirBnBで日々を過ごす。

で、結局、好天が見込めないってことで、最初の週は動けず、週末に突入。

土曜日はEvanファミリーとローカルクライマーが運営するジムへ

洗練された商業ジムとは違う安っぽい雰囲気だけど、課題はなかなか良かった

Evanファミリーは早々に切り上げて帰っちゃうし、良い天気だったのでほとんど人が来ず、ちょっと寂しい

マットが壁と一緒にせりあがっていて、ほとんどルートクライミング的に長く登れるこの壁が特徴的(持久力の無さを思い知らされた)

mato, yoshiコンビは近場をハイキング。EvanがSwiss Topoというアプリでいくつか推奨ハイキングルートを教えてくれたけど、こっちの人たちのアクティブさにちょっと引いていた。

おっさん三人の晩餐

滞在費はスイス持ちとはいえ、贅沢三昧をする性分の三人では無いので、COOPやMIGROで買いだしては自炊の日々。なのに、毎回の買い出しが一万近くいくのはさすがスイス。宿泊しているAirBnBも、二週間で40万円以上してて眩暈がしそう(一泊一人一万円×3人×13泊、と考えれば、チューリッヒ市内としては破格の安さではある)。

さぁ、あと一週間を残すのみとなったけど、果たして氷河上での掘削トレーニングはできるのであろうか??

Wednesday, 18 June 2025

EGU2025 Day5

CR2.3 Hydrology of ice sheets, ice shelves and glaciers

Glacier outburst floods originating from glacial water pockets: what do we know?  
Christophe Ogier
ピオレドール君のWater Pocketからの洪水の記録についてインベントリを作成した話。

Self-regulation of fast-moving glaciers in Greenland: from borehole observations to spaceborne measurements  
Poul Christoffersen
Greenlandの氷河上流にある池の水文について、地震計やGNSSを使って観測。底部のチャネルの状況を推定する辺りはこれまでの研究とあまり変わらない印象

Decade Long Time Series (2015 - 2024) of Ice Slab Expansion in Greenland using Sentinel-1 SAR   
Ellen Mutter
フィルン内の融解水再凍結で形成される「Ice Slab」の分布について、航空機レーダ観測の結果を学習させて、Sentinel-1で広域推定。MacFarrenのモデルの閾値を改善。なかなかクレバー

Meltwater runoff from Greenland's firn area – what we have learned during five years of research focused on the Greenland Ice Sheet runoff limit  
Horst Machguth
いろんな論文でお目にかかるHorstさん、今回ようやく会えた。可視画像からRunoff Limitを求め、その時空間変動を明らかに。RCMではこういう水平方向のRunoffを扱ってないことへの問題提起。

コーヒーブレイクの時間を使ってSojiroとAchilleの情報交換。SojiroはTrambau論文はよ書け。

午後はポスター会場をぷらぷら

Global catalogue of future glacier lakes using novel bed topography
Céline Walker
IGMで推定した氷厚から、将来湖ができそうなところを抽出した。既に氷河湖がある氷河の流動をどうしてるの?と聞いたら、「私は結果をもらっただけなのでわからない」と。岩盤ダムばかりらしいのでGLOFの恐れもないので、波及効果はイマイチか。将来後退が進んだ時に、どの氷河に氷河湖ができて後退が加速するか、どの氷河には氷河湖ができないのか、を評価するのには良いかもしれない。

From process-based snow modelling to spatially distributed glacier mass balance estimates 
Giulia Mazzotti
風による積雪の再配分を熱収支モデルに組み込む努力をしているが、まだ結果がイマイチとのこと。アイスコア解釈とかには重要そう。

充実の5日間でありました


ポスター会場でMegさん(今、海外学振でパリの天文台)に偶然&超久しぶりに会って、食事に誘われ、Sojiro & Yotaと参加することに。食事前に寄ったクラフトビールバーはなかなか良かった。

大会期間中、河川敷しか歩いてなかったので、街中を散歩(人が多くて5分で後悔)


オーストリアに長くいて、今年からJAMSTECに移籍したSさんと名大工学部土木(ご近所!)のNさんとその学生さんも一緒。本格的な四川料理でうまかった。Nさんはブータン人卒業生(水文気象局所属)からSATREPS出したい、JICA事務所にも勧められている、と言われているらしいが、我々が10年以上前にGLOFネタでやってるから難しいのでは?などなど、いろいろお話しできてよかった


翌土曜日は飽きもせずBoulderBarで遊び、日曜日にチューリッヒに戻る。またしても途中で席を奪われて途方に暮れるが、一時間ほどで座れたので結果オーライ

 
チューリッヒの手前で随所に見かけたよさげな岩場

チューリッヒの後半のお宿はAirBnB。メールで鍵のありかのインストラクションがきて、鍵の入っているボックスは直ぐに見つかったのだけど、狭い郵便受けの中で横を向いていて、夕暮れ迫る中番号を合わせるのにエライ時間がかかる。★二つ減

日曜日でどこもかしこも閉まっており、数km先のガソリンスタンドのコンビニで夕食などを入手。

Tuesday, 17 June 2025

EGU2025 Day4

CR2.1:Modelling ice sheets and glaciers

Zeller: Investigating the basal friction law of Alpine glaciers from multi-decadal up to centennial observations  
1920と1980に、氷厚の変化分+Hから期待される流速の増加分+Vよりもはるかに大きいSpeed upが観測されていて、その原因をElmer/Iceを使って計算。

Gillian Smith: Inverting glacier thickness in High Mountain Asia with a deep-learning-based ice flow model  
HamishのHeli-GPRとIGMで氷厚を推定。平均ではMillanと近いが、分布はずいぶん違う。セッション後に「氷河湖に接してると計算に使う流動がずいぶん違うけど、どうしてるの?」と聞いてみたら、氷河湖末端氷河は扱っていないとのこと(興味がないっぽい?)。

Zhuo Wang: 3-D thermal structure and age modelling of the ice sheet in the Dome Fuji region, Antarctica  
ドームふじ周辺のAWIのレーダ観測データを鉛直流動モデルをを使って年代を与えたり、融解の有無を評価したり。立川方面の皆さんはご存じなのだろうか?

Sourav Laha: Modelling evolution of Greenland Ice Sheet near-surface ice slab and its impact on runoff
DiGHAプロジェクトの途中でNCPORからUKへ移籍したSourav君、テーマががらりと変わり、グリーンランドのフィルン内の再凍結層のモデル化。翌日のセッションでもこの関係の発表が多数あり、ライバルが多くて大変そう

Samuel Cook: Global ice thickness and committed loss to 2050  
IGMで全球の氷河の氷厚を再評価。地域ごとにやってる連中との棲み分けはどうしてるんだろうか?コミュニティ内でも競争ってのはシンドすぎない?

Florian Hardmeier: Exploiting Lagrangian particle tracking in the Instructed Glacier Model (IGM) to model coupled debris-covered glacier dynamics  
IGMでデブリ氷河の形成を計算。昨年のデブリ氷河WSでも聞いたけど、今回ようやくわかった。逆推定とかできたら面白そう


CR1.7: Changing cryosphere under a changing climate – from observations to environmental and social effects

The effect of irrigation on glacier evolution in High-Mountain Asia  
Magali Ponds
カラコルムアノマリーの原因仮説の一つである、灌漑による降水量増加→氷河縮小抑制の効果を、IRRMIPという相互比較プロジェクトの結果を使って評価。ホンマかいな、、検証が無いのがあれよね。

Current climate policies will affect multi-century global glacier change  
Harry Zekollari
ワイも参加していてまもなくScienceに出るGlacierMIP3の紹介

Towards Reconstructing Debris Supply to Reproduce the Historic Changes in Debris Extent at a Swiss Glacier  
José M. Muñoz-Hermosilla (poster)
フランチェスカ、Evanのグループ。IGMを使ってデブリの流跡をフォワード計算。Florianとかとの棲み分けはどうしてるのかしら?

Precipitation Uncertainty Hampers the Understanding of Glacier Response in High Mountain Asia  
Thomas Shaw  (poster)
ワイも共著。お客がひっきりなしに来てた。大流域ごとにまとめた夏降水割合が、降水プロダクト間で大きく違っていることを表現した図がうまい。


夕方ISTAの若者らとBoulderBarへ。その後、Marinに誘われてETHコミュニティのディナーにのこのこ参加。メールでGregorievのことをあれこれやり取りしたLanderとも会えた。

2023ピオレドール受賞者がおった。South face of Pumari Chhish East (The Crystal Ship, 1,600m, 5.10+ M7 A2, 5-days) in the Hispar Muztagh by Christophe Ogier, Victor Saucède and Jérôme Sullivan、GPRなどをつかって氷河排水なんかをやっているとのこと。BoulderBarでも動きが他の連中と違ってエレガント。登れて研究もできるなんでちょっとずるくない?

とかいう話をチューリッヒに戻ってからEvanと雑談してたら、Evan自身もその昔、パタゴニアでのクライミングでピオレドールにノミネートされたことがあるとかなんとか、君ら、多彩過ぎるのも大概にしてよ


Monday, 16 June 2025

EGU2025 Day3

CR6.5 Observing the Cryosphere: Advances in remote and close-range sensing

Charrier: Monthly variations of glacier velocity extracted from large scale datasets  
ITS_LIVEベースで自動で流速を月単位で抽出できるようにした、TICOIというメソッド。TCの受理されたそうなのでチェック。BhutanのLugge氷河はITS_LIVEの流動がダメダメだったけどどうなのだろう。

Ioli: Automated pipeline for DEM generation from SPOT-5 stereo imagery for glacier elevation change assessment  
2021からタダで公開されたSPOT-5からのDEM作成を自動化。便利そうだ。

Hassan(poster): Rising Lake Levels Across High Mountain Asia  
なかなか丁寧に解析していてよい。でも、JacobのNature論文知らんのか!

Harpur: Ice marginal lakes enhance outlet glacier velocities across Greenland  
まぁそうよね


Glacier monitoring from in-situ and remotely sensed observations

King: Andean glacier mass balance through the last six decades  
相変わらず丁寧な解析

Mattea: Six decades of satellite remote sensing reveal widespread glacier pulsations in the Hissar-Alay (Central Asia)  
一緒にタジクにいくEnricoのSurge Glacierの検証。早口でついていくのが大変

Baldacchino: Investigating seasonal velocity variations of debris-covered and debris-free glaciers in High Mountain Asia  
流動の季節変化をDebris-freeとDebris-coveredで比較。季節パターンのある氷河と無い氷河の違いが面白い

Fujita: Finding the turning point and main driver of a disappearing Himalayan glacier  
反応はまぁまぁかな。ふと思い出したのだけど、14年前のEGUもヒマラヤの氷河変動の観測結果とそれをモデルで表現してELAがどうたら、という話だったので、今回も似たような路線で我ながらちょっとイマイチ。次回はもっと違うネタで攻めなアカン。

Granados: ~70 years of glacier monitoring in Mexico  
メキシコにも氷河があったのね。今はクレーターに残るだけ。

Brough: Significant global loss and fragmentation of glaciers since 2000  
Debris-covered氷河を解析から除き、2020-2024のOutlineを自動で抽出し、裸氷域や面積変動を出している。標高にアップデートしたDEMを使っていないように見えるけど、それだとアカンのでは?

夕食はFrancescaのチームと。久々のちゃんとした食事。

Friday, 13 June 2025

EGU2025 Day2

Geophysical and in situ methods in the Cryosphere

Groos: UAV-based monitoring of the mountain cryosphere: Recent advances and future prospects  
早くTrakardingのサーマルイメージの解析しなきゃ

Hawkins: Radar and seismic investigations of an active glacier hydrological system in West Greenland 
ウチのポスドクKK君が東南極でやっている氷底湖の観測とそっくり。(パワポ入手した)


Polar Meteorology and Climate and their Links to the Rapidly Changing Cryosphere

Noel: Atmospheric response to Antarctic coastal polynyas  
ポリニア上空の大気レスポンスをWRFで解析。温められて対流が生じている。おもろいけど検証は?

Suitters: Quantifying the risk of unprecedented Antarctic heatwaves  
2022/3のドームCの昇温イベント(>30K)。MPI-Frequencyってなに?PDFでアノマリーのレア度を表現しているのが使えそう。

Stefanini: Extreme increases in snow grain size on the Antarctic Plateau from Satellite Observations and Ice Sheet-Atmosphere Interactions
DomeFで2019/20の夏にマイクロ波で観測された、雪粒子の増加について。Grain size indexを1-(TB150GHz/TB89GHz)で表現。2000年からデータがドリフトしているようにも見える。降雪イベント後におだやかな天気が続いたため?似たような気象条件はいくらでもあると思うけど。。

Boehm: The Key Role of the Southern Annular Mode During the Seasonal Sea Ice Maximum in Recent Antarctic Sea Ice Loss  
海氷とSAMの関係。SIC(%)/σSAMという規格化した指標がおもしろい。

Jonathan
グリーンランド北東のIce capを対象に、ドローンで上空の気温を測り、CARRA reanalysisを補正して、temperature gradient (lapse rateのことか?)を求め、MARのSMBと比較(なぜモデルの出力?自分で計算しないの?)。クラスター解析をしてsynoptic patternとの関係をみている。この辺、現在HESSに投稿中のKK君のやり方と近い

Plach: Exploring atmospheric transport into the Arctic 1940 to 2023 - A Lagrangian Perspective  
ラグランジュ再解析(LARA)で北極海に空気塊がどの程度留まるかを解析。セクターをシベリア、NA、GL、EUの四つにわけている。HySPLITを超えたいとの野望が見える。セッション後に声を掛けて、「HySPLITで似たようなことをやったけど、ラグランジアンで追っかけているのがいいね」と伝えたら、「それなっ!」と自慢げであった。


CR1.2 | Observing and modelling glaciers at regional to global scales

Fontrodona-Bach: DebDab: A database of physical properties of supraglacial debris  
昨冬のデブリWSでも聞いていたが、フランチェスカチームのお仕事。デブリパラメータのデータベース、査読は「単に人の研究を集めてきただけじゃん?」と指摘されて苦労しているらしい。今後出てくるであろうデータを、どう取りまとめるかが課題。ウチも協力しないとね。それにしても、デブリモデル相互比較はいつになったらでるのやら。。

Zemp: The second Glacier Mass Balance Intercomparison Exercise 2025–26 – a Call for Data & Participation  
GlanBIE in Natureが出たばかりでウッキウキのMichael。GlanBIE2にむけての話。トランバウの結果まとめないと。

Marin: Contributions of avalanches to glacier mass balance at the global scale  
軽快に全球の氷河を計算できるOGGMに雪崩の影響を組み込んだ、というお話し。現在公開査読中。デブリ、カービングのスキームが注目されているけどこれも大事だな。雪崩スキームは他所からの借用で、それ自体は傾斜で場合分けしてるだけなので、実際にどの頻度で、どのくらいの規模の雪崩が発生していて、どれだけの雪が再配分されているか、については、特に氷河に関してはほとんどわかっていないので、これをターゲットにした研究はやる価値がありそう。


Julia and Johannes Weertman Medal Lecture by Shin Sugiyama and Arne Richter Award for Outstanding ECS Lecture by Brice Noël

すごすぎて嫉妬心すらわかない。あっぱれ。

Thursday, 12 June 2025

EGU2025 day1

14年ぶりのEGU。会場まで5kmほど、ドナウ川沿いを歩く。朝の運動にちょうど良い感じ。

河川敷の公園のあちこちに野生のうさぎが。。

Frontiers in ice core sciences

Barbante
Beyond EPICA 2799mのLittle Dome C (LDC) コアの速報。120万前は確実、150万年前もいけそうとのこと。圧巻。

Chung
アイスコア年代決定のための流動モデル。いろいろ工夫しているけれど、今のところ1次元モデルが一番良い結果。2.5次元バージョンで、水平方向の流動について、涵養量が変化すると深さ毎に水平フラックスを考慮している、というところが感心した。

Bingham
広域アイスレーダの結果について、明瞭な層がどの地域でどの深さに見えているかについての解析。3Dなので大変そう。基本、火山イベントだろうとのことで、地域ごとの広がりとかから起源となる火山の同定とかできたら面白いんじゃないかな?

Spagnesi
オーストリアアルプスのコアの底部近くを39Arで年代決定。アイスマンが見つかったところからすぐ近くの氷河。ヨーロッパでもまだまだやられていないことはあるのだな。

Holland
2017年の低温室故障で失われたローガンのコアを掘りなおして解析した結果の報告。涵養量が近傍のコアの6倍もあるのが謎(説明できてない)。吹き溜まり?標高によって起源が異なる、というのは以前の研究でも主張していたけど、ちょっと苦しい解釈では?d15N測って大気の酸性度について議論している。服部仮説とどういう関係にあるのかはちょっと追い切れなかった。

KumikoさんのSigma-D Black Carbonの発表にSuzan (超久しぶり!)が食いついていた。「どう?USA大丈夫?」とコーヒーブレイク時に声をかけたら、Stasと二人で乾いた笑い。

Tetzner
コア中の有孔虫の分析(大変そう!)。コアサイト毎のバックトラジェクトリと組み合わせての解釈は、ダストと一緒。BTの表現でKarnell Densityというのを使っている。軽く調べたけど、具体的にどうやって空間分布の表現に適用しているのか、ちょっとイメージできない。

Mühl(methan)/Klüssendorf(N2/O2):
DomeFのライバル?内容的にNIPRが先んじているような印象

Lamothe:
Horiuchiさんのライバル?でも36Clも測っているのがすごそうだが、10Be/36Cl比が変わらない、というのはどこまで確実なのだろうか?

Wolff
アイスライズで400m近く掘削し、55万年前まで遡った。KennyがやりたがっていてNIPRが雑な対応してできなかった企画を実現したような話

Wang
81Krによる分析。中国すげー

Kutuzov
spICP-TOFMSという分析器で、ダスト粒子毎にどの化学成分で構成されているかを分析。すげーデータ量。パミールのコアでもやれるとよいな

Raspagni
Naokoのライバルか。詳細は理解できなかった。

Legrain
過去の大気の気温減率がどうだったか?を調べ、高標高ほど温暖化していたかどうかについて北米~南米でやった自身の先行研究に基づき、Blue Iceの氷を使って南極周辺で解析した、という話。先行研究が面白そう。結果は「南極では高いほど温暖化したということは無かった」とのこと


Glaciers and Ice Caps under Climate Change

Davies
Juneau Ice Fieldの変化。リモセンで丁寧に解析しているけど、主張していることはまぁ普通かな

Kirit/Tobias
天山2つ、アッサム、Chota SigriでGeodetic MBを出し、それに合うようにMBをCOSIPYでモデリング。気象パラメータの調整の説明がない。ウチが考案したT-P-Bヒートマップを作成していてエッヘン、といった感じだけど、何が感度を決めているか、の議論は無かった。

Tobias
末端までアクティブ(Kanshung/Gangotri Type)だと、全体的に低下するけど、末端が停滞(Khumbu/Rongbuk Type)していると中腹で顕著に低下する、氷河湖があると話は別、という、最近あちこちで話している話。じゃぁ、何がこのタイプを決めているか?はまだわかっていないみたいで面白そう。

Armstrong
カナダロッキーAthabasca氷河では過去に掘削孔を使って氷河内部の流動分布が測られていたので、最近それを測りなおし、氷河が薄くなったことで流動がどう変化したかを確かめた話。底面滑りも遅くなっていて、これを考慮すると、末端変動は一時的に大きく後退するけど、将来的には後退が小さくて済むために、全体の質量損失も少なくて済む、というモデルの結果が面白い。GRLで査読中とのこと。

Marcus Gastaldello: ベルンでのドリルトレーニングに参加していた若者。スイスアルプスの涵養域でフィルンの温度観測をしていて、フィルン用に改良したCOSIPYを使って解析(Sauter2020/Marchenko2017)。水みちスキームも入れると良い感じとのこと。タジクのフィルン温度もやってもらったらいいかも。Egusphere-2024-2893で査読中だが、コメント見たら「一つ前の研究と何が違うねん?」となかなか手厳しい。その話を振ったら「いやもう大変で、、」と嘆いていた(→後日、ツェルマットで飯を食っている時にアクセプトの連絡が来てニッコニコ)

Maffezzoli
IceboostというMLで全球氷河の体積を推定。FarinottiやMillanよりもよい、とのこと。観測で学習させているのだから当たり前では?と思わんでもない

Goutard
裸氷でも、表面の凸凹にはある程度の水が存在しているはずで、それを考慮すると(buffer=0.01m w.e.)再凍結とか質量収支がどうなるか?というモデリング。Meraでやっている。これもCOSIPY。面白い視点だけど、検証は?風化氷の保水能力とかも関係してくるはずなので、こちらも一緒にモデル化しないと片手落ちっぽい。

Åkesson
スカンジナビア最大の氷帽(81の溢流氷河)の変動の観測とモデル。

Jouvet
最近話題の機械学習流動モデルIGMの開発者。誰もかれもがIGMに夢中で、新しいおもちゃとしてはいいのだけど、それで満足したらアカンとちゃう?とも思う

Irarrazaval (poster)
パタゴニアの氷河・氷河湖について、ブータンで我々がやったような解析をしている。1940年代の写真とかあってすごい。どっかで見たことある図だなぁ~と思っていたら、以前査読してた。湖盆とFarinottiの氷厚データを比べていて、合うやつもあれば合わないやつもあり、合わないヤツも過大評価過小評価両方あって、氷厚もまだまだ、という感じ。この辺はウチのSyunkiの修論と同じ。「やっぱ湖盆の観測は大事&増やしていかないとね」と意気投合。


初っ端から詰め込み過ぎで知恵熱が出そう

Wednesday, 11 June 2025

スイスドリルトレーニング その2

今回は滞在が長いので、 休日の過ごし方も重要ということで、マイシューズを二つ持参。EvanとMarinに連れられてボルダリングジム(Minimum Fluela)へ

https://maps.app.goo.gl/7suJmmfwp59DhkF87

随所にチョークボックスが置いてあって、マイチョーク不要(というか禁止)

グレードは名古屋のホームジム(辛め)に比べると超甘々。とはいえ、6cくらいまではまぁまぁ登れたものの、6c+~7aはやはり厳しい

いい具合にヘロヘロになって解散


翌日、ウィーンへ列車移動。Omioというアプリでチケット購入。「国をまたぐ場合はチケットをプリントアウトしろ」ってのが面倒。たぶんスマホ表示でも大丈夫なんだろうけど、揉めたら困るのでホテル出るときにプリントアウトしてもらった。

着いた列車に乗って適当に座っていたら、「そこウチが予約してる席」とファミリーに追い出される。眺めていると、そこここで同じようなやり取りが。どこが予約されていて、どこが空いてるのかさっぱりわからず、やってきた車掌ねぇさんに聞いたら

「今日は!全席!予約で!いっぱいよっ!」と、

たぶん百回くらい聞かれて答えてきたんだろうな、って勢いで返された。

えぇ~ウィーンまで7時間以上あるけど、立ちっぱ?

と軽く絶望していたけど、小一時間いったところで席が結構空いて無事座れる。ミュンヘンで乗り換えた際も予約のあるおっちゃんに追い出されたけど、すぐ隣の席は空いていたようで無事座れる。

そのおっちゃん、ザルツブルグで降り損ねたらしく呆然としていてお気の毒であった。

一時間ほどの遅れでウィーン着。多少高くても席も予約した方が良い。


昨冬にデブリ氷河のワークショップで一週間ほど滞在したおかげで、土地勘があってサクッとホテルにチェックイン。ISTAの学生さんで、ヒマラヤに一緒にいったAchilleと落ち合って夕食


翌日は日曜日、こちらの知人を付き合わせるのも悪いので、一人でボルダリングジム(BoulderBar)へ(これも昨冬にエンジョイ済み)

https://maps.app.goo.gl/Wt4c6nDN68qmKgYx5

ここもグレードはスイスと似たような感じ

日曜日はどこもかしこも閉まっており、ガソリンスタンド併設のコンビニだけが営業していた。(ジムで食事もしておけばよかった)

さぁ、翌日からは超久しぶり(14年ぶり)のEGU。超楽しみ。


Tuesday, 10 June 2025

スイスドリルトレーニング その1

当研究室でもアイスコア掘削ドリルのシステムは所有していて、たぶん世界的に見てもたくさんのサイトで掘削実績があるのだけど、なんせ重い。

この秋のパミールのサイトはヘリでのアプローチができないため、人手でドリルを運び上げ、掘ったアイスコアを下す必要があるため、できるだけ軽量であることが求められています。

で、ベルン大学が所有するFERICSドリルシステムを借りることになり、その操作に慣れるためのトレーニングのための一ヶ月滞在

チューリッヒ到着翌日から早速ベルン大学に通ってのトレーニング(チューリッヒ~ベルンは電車で約一時間)

ベルン大学はベルン駅直結、エレベーターを上がると立派な建物がドーン

地球科学関係の建物はまぁ普通な感じ

簡単な打合せの後、ごみ捨てコーナー&資材搬入スペースみたいなところを使ってドリルの組み立てと操作を始める

上がドリルのコントローラー、下二つの木箱がバッテリー

マスト(支柱)は自立せず、四方向にスリングを張って支え、角度調整もスリングでやる
写真はコアバレルとモーターを接続した状態(掘り進めると、この間にバレルと似た形状のチップチャンバーが入る)

一枚100Wくらいのソーラーパネルを三枚つなげ、それぞれ昇圧してバッテリーを充電しつつ、掘削する、というシステムなのだけど、この日は想定程電圧電流が上がらず、要検討

ドリルのカッターマウントは、日本と違って一体型、刃がなまったら丸々交換
内側に飛び出しているのは「コアキャッチャー」で、アイスコアは割って、バレルから脱落しないようにするための刃。これの長さや強さをコアの質によって変える必要がある

掘削テント(よく使われている、ノースフェースの巨大ドームテント)の組み立て
ポールが車に当たらないかヒヤヒヤ

初日は一通り組み立て、試運転、解体までやって終了

二日目は梱包リストに従って、パミールに持っていくもの、この後のブライトホルンに持っていくもの、持っていかないもの、に分類して梱包し、リスト確認などをして、あとは諸々打合せ



休憩スペースにあった、なんとDome Cのアイスコアを題材にしたマンガ
凄い力の入れようである

三日目はチューリッヒ大のキャンパスで、予定している予算申請の内容についての打合せ

最初の週はこれでいったん終了し、EGUに参加するべくウィーンへ移動

Saturday, 7 June 2025

スイスドリルトレーニング その0

 ひょんなことから中央アジアでアイスコア掘削をすることになり、そのトレーニングのためにスイスに一ヶ月ほど滞在してました。


フィンエアーのフライトは、北極点上空を通過する超大回りな経路



渡航時、ヘルシンキのイミグレにて

入国管理官「行先は?」
ワイ「スイスのチューリッヒ、氷河の共同研究」
入国管理官「滞在は?」
ワイ「スイスチョコレート」
入国管理官「あっ?」
ワイ「スイスチョコレート」
入国管理官(「コイツ、英語聞き取れんのか」という顔をしつつ)「チューリッヒでの宿泊先を聞いてるんだけど」
ワイ「スイス・チョコレート、ってホテル」
入国管理官(あ~もういいや、的な感じで)「帰国便のチケット見せて」

というやり取りをした末にチューリッヒに到着、Evanの出迎えを受けて「スイスチョコレートホテル」に投宿。受付にチョコレートファウンテンがあって常時利用できたけど、衛生面を考えて一度も手は付けなかった。チューリッヒ中央駅から歩いて5分ほどと、超絶便利な立地だが、この名前は何とかしてほしかった。


この後、

ベルン大学にてFERICSドリルのセットアップと操作法のレクチャー、梱包

新規共同研究申請の相談

一週間ほどウィーンのEGU2025に参加

ブライトホルンにて実際に掘削するトレーニング

と、盛りだくさんの一ヶ月