Friday, 7 May 2021

a new paper in nature

 久々に成果物が出たのでご紹介


Projected land ice contributions to twenty-first-century sea level rise

in Nature

著者84名!のコミュニティ論文です。


以下、要旨をかみ砕いてご説明



全球の海水準上昇に対する陸氷の寄与(氷河・氷床が縮小することによる寄与)については、これまで、最新の社会経済シナリオの下での予測はなされておらず、また、関与している様々なモデルから生じる不確実性の系統的な検討はこれまでありませんでした。

最近行われた2つの国際プロジェクト(氷河変動予測と氷床変動予測)により、複数のモデルを用いた予測実験結果が大量に生成されましたが、主に旧世代のシナリオと気候モデルを使用しており、考慮すべき不確実性を十分に検討することはできていませんでした。

本論文では、新しいシナリオの下での氷床・氷河モデルによる、海水準上昇に対する陸氷の寄与に関する予測の確率分布について、総括的、系統的な統計解析をおこないました。

その結果、地球温暖化が1.5 ℃に抑えられた場合、21世紀の海水準上昇に対する陸氷の寄与は、現在の温室効果ガス排出の傾向が続いた場合に対して半減することがわかりました。

その中央値は、2100年までに海水準相当量(SLE: sea level equivalent)で25 cmから13 cmへと半減。

南極からの寄与の予測は、気候温暖化で融解が増加することによる氷の減少と、大気中の水蒸気が増加することによる降雪の増加という、相反するプロセスの不確実性のため、排出シナリオの違いに対する明確な違いは見出せませんでした。

ただし、現在の排出傾向の中でも悲観的な仮定の下では、南極の氷の減少は5倍になると予想され、陸氷の海水準上昇への寄与の中央値は42 cmとなると見積もられました。また、温暖化を1.5 ℃に抑えた場合でも、5パーセントの確率で50 cmを超えるとの予測が得られました。

このことは、予測の大きな幅(1.5 ℃温暖化の下での主要予測SLE 13 cmと、現在の排出シナリオの下でのリスク回避予測SLE 42 cm)がある限り、21世紀の海水準上昇に対する適応計画は、気候政策と南極応答の予測精度が向上されるまで、陸氷の寄与について3倍の不確実性を考慮しておく必要があります。


当研究室(藤田・坂井)は、GlacierMIPを通じて、世界の氷河縮小の将来予測に関する計算をおこない、データを提供しました。ウチらしくなく、フィールドの話は一切無しのゴリゴリのモデル研究。

で、肝心のモデルと計算手続きの内容が論文になっておらず、ただいまヒジョーに焦っているところです。

なんというか、蜘蛛の糸にぶら下がってる感じで不安になるよね。

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